クリニカルクラークシップ準備学習

M4の夏休み明けからクリニカルクラークシップ(CC:臨床実習)が開始となり、M4の春学期はCCの準備期間として、小括講義、身体診察や、症状からの鑑別を行う症候論など、CCを行うために必要な領域を学ぶクリニカルクラークシップ準備学習が実施されます。

 

小括講義

モデルコアカリキュラムに含まれる内容のうち(1) M13の医学の基礎コースで取り上げられなかった項目、(2) M13の医学の基礎コースで修得した知識を踏まえて、再度確認が必要と思われる重要項目、(3) CCを行うにあたり、事前に身につけておくべき知識・項目の習得をねらいとした講義が行われます。

 

症候論

モデルコアカリキュラムで提示されている重要な症候で、主にM13のテュートリアルで取り上げられなかった症候について学びます。症候論では、主訴(症状)から考えられる疾患の可能性を列挙し、臨床情報を用いて鑑別を行い、診断を絞り込む過程を学ぶものです。

症候論の一部「頭痛」・「悪心・嘔吐」・「意識障害・失神」は、Team-Based Learning (TBL)形式で実施しています。TBLは医学教育分野で急速に広がりつつある教育方法で、大教室内でクラスを少人数のグループに分けて、グループ作業と教員からの講義を繰り返す方法です。能動的・協調的な学習を促す少人数グループ学習のメリットを活かしながら、大規模なクラスを少数の教員で運営でき、専門分野の教員から即座にフィードバックを得ることができる、教育効果の高い学習方法です。

 

最も疑わしい疾患は?見逃してはならない疾患は何か? 各グループの解答が出そろいました。

 

学生による発表。その疾患を疑った根拠、さらに得たい臨床情報についてプレゼンテーションを行います。

 

その後、教員による解説。実はこの症例の診断は・・・。

学生から驚きの声があがります。実際の患者さんをもとにしたケーススタディ。軽症に見えても重症なこともあるのが実際の現場です。患者さんの命に関わるような重大な疾患を見落とさないためには、注意深い病歴聴取と診察の重要性の認識を新たにしたのではないかと思います。

 

答えは必ず患者さんの中にあります。患者さんの持っている情報をいかに引き出し、その病態を説明しうる原因をいかに推測し探っていくのかは、医師としての重要な力です。これからはじまる実習、そして医師になってからも、一生磨き続けなければならない、大切な力の一つです。

 

Pre CC

クリニカルクラークシップにスムーズに入れるように以下のような教育を行っています。

 

Evidence-Based MedicineEBM)

臨床医には常に患者に最新・最善の医療を提供することが求められます。「最新・最善の医療を提供する」ということは当たり前のようですが、実は簡単なことではありません。医学の進歩のスピードはとても速く、学生時代に教わった知識は、数年も経つとすぐに古くなってしまうからです。そのため、医学生は、ただ知識を詰め込むのではなく、最新・最善の情報を取り入れ、その情報をもとに臨床決断を行うスキルを身につける必要があります。そのための強力な方法がEvidence-Based MedicineEBM)であり、医学類では臨床実習前にEBMについて演習を通して学びます。

 

EBM(根拠に基づく医療)は、患者の診療において、最新・最良の根拠(リサーチエビデンス)を考慮した上で、個々の患者の特性や医師の経験をバランスよく取り入れ、その患者にとって誠実で妥当な決断を行うことです。
医学類ではEBMのステップについて、臨床シナリオを元に実践的に学びます。

 

 

 

診療録とプレゼンテーション

クリニカルクラークシップにおいて、基本となる診療録および臨床現場でのプレゼンテーションについての演習です。医療面接シーンの映像をみて、実際にそのケースの診療したスチューデントドクターとして診療録記載をした上で、回診時など実習中に想定されるシチュエーションでのプレゼンテーションの練習を繰り返し行います。

 

チーム医療

患者に最善の医療を提供するにはどうすればよいでしょうか?

知識や技術を高める、患者の希望を尊重する、患者と信頼関係を築く、いずれも大切です。しかし、医療には医師以外にも実に多くの専門職(看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など)が関わっており、患者や家族も含めて、患者が最善の医療を受けることを共通目標とする「チーム」として力を合わせることが求められます。

医療がチームワークであることは、各診療科の臨床実習が始まる前に理解しておくべき重要な視点であり、筑波大学では、開学以来、チーム医療教育を行っています。現在は、M45月から6月にかけて、各班1週間、(昼間はもちろん真夜中まで!)附属病院病棟の看護師に付いて、看護師が行う業務や医師を始めとする他職種と連携する様子を見学したり、院内専門チームが活動する様子を見学したりします。

 

基本手技

医師は知識や態度だけでなく、採血や点滴注射、外科の基本的技術、救命処置などの技能も求められます。クリニカルクラークシップ前に、医師としての基本的な技能を獲得するため、各種シミュレーターを活用し、基本的技能を獲得していきます。また、技能の習得だけではなく、技能を学ぼうとする姿勢も評価されます。

 

<M4 Pre-CC 採血実習>

採血実習

 

<M4 Pre-CC 外科の基本的技術:切開・縫合実習>

切開縫合

 

英語で医療面接(自由選択科目)

昨今のグローバル化で、英語で医療面接が必要とされることが増えてきました。そこで、英語での医療面接に興味がある学生は、模擬患者さんを相手に英語で医療面接をする経験をします。英語でのコミュニケーションだけでなく、非言語の異文化間コミュニケーションを学びます。

 

診療法演習

4年次の春学期には身体診察の講義と小グループでの診察法の演習を行います。ここでは、クリニカルクラークシップで必要となる身体診察法を各ステーション(医療面接、頭頸部診察、胸部診察、腹部診察、神経診察、救急など)で効率よく体系的に学ぶことを目的としています。ステーション毎に小グループに分かれることで専門診療科の指導教員からきめ細やかな実技指導を受けることができます。指導教員には毎年指導前に教育能力を高めるための実践的方法を身につけるFaculty Developmentが行われ最新の医学教育の状況が共有されるとともに、時代の変化に対応した標準的な診察手技を習得できる仕組みとなっています。学習内容は8月下旬に行われる客観的臨床能力試験(OSCE)実技試験にて評価しています。

 

<診察法演習:頭頚部診察>

頭頚部

 

<診察法演習:救急>

救急